田舎のヒロインわくわくネットワーク

ヒロイン通信

AMAPとCSAと産直と提携

 あっという間に1年がたってしまいました。
1昨年のことです。11月にフランスのブルターニュ地方、レンヌにあるレンヌ第2大学で生産者と消費者の連環を基盤とする農業のあり方を問う『分かち合う農業』というテーマの研究会があり、日本での私たちの取り組みを発表してもらえないかとレンヌ大学の雨宮裕子先生からメールがきました。ただし、1万字の論文を提出して学内審査にパスしたらとのこと、もしかしたら飛行機のチケットも出るかもしれないという条件つき。『この忙しいときにそんなことできるもんか!』という夫の言葉は右の耳から左の耳へ。なぜ、私たちの取り組みが必要なのか、面白そうなのでとりあえず挑戦してみることにしました。テーマは『おけら牧場から広がる都市農村交流』と『田舎のヒロインわくわくネットワーク』です。フランス初め、ヨーロッパの農業や現状を学べるせっかくのチャンス。ヒロインの仲間たちに声をかけ急きょ6人が集まりました。

 レンヌはブルターニュ地方独自の文化や伝統を持つ地域。できればホームステイをして人々の日常を経験したいと紹介していただいたのがフランソワさんと迪子さんご夫妻。3階の2部屋とバス・トイレ・キッチン、そのほかに離れの1室を貸してもらって2週間のレンヌ生活。大学へ通い、共同経営の農家レストランや農家民宿を訪ね、フランスで一番大きなマルシェ・リスの広場の市へ行き、迪子夫妻の案内で、市場で牛乳やチーズを販売し、アマップにも参加しているバンサン氏の農場を訪問することができました。ついでに私の研究テーマのBSEの原因とリービッヒを調べにドイツの農家民宿で宿泊しながら、7日間ドイツを旅しました。「2009夏のヒロイン通信」の参加メンバーの報告のように、かけがえのない貴重な、スリルに満ちた楽しい生活体験でした。

 あれから一年、レンヌで発表された種々の研究テーマや、私に要請された地域の人たちと一緒に行っている取り組みと『田舎のヒロインわくわくネットワーク』の存在やその意味をずーと考え、大切なことに気がつきました。そのことを伝えたいと思います。


★ ★ ★食の問題は生命の維持を超えた社会や文化に根ざした問題 ★ ★ ★

 フランスでも小さな農家がつぶれ、離農し、遊休地や荒廃地が増えています。狂牛病で食の安全への不安が高まる一方、食物アレルギーがふえ、人は何をどう食べて生きればよいのか、食の問題は生命の維持を超えた社会や文化に根ざした問題であると考えられるようになり、そのために食品流通の公正なルールを検討し、市場原理の本来の役割の意味を問い返す必要があるとみなされるようになりました。

 農業は人と人の命の糧を育む大地を調和的に結びつける連環の営みであり、生産者と消費者をつなぐ産直は、土から切り離されてしまった都会の消費者に土へ回帰するきっかけを与えてくれます。産直は生産者が消費者と交流し、農業への理解を深め、小さな農家が生き延びるための一つの方法です。そこで、消費者が小さい農家を支え、地域が再生できるように消費者と生産者が一緒になって農業のあり方を考え、農業生産物を受け取るだけではなく、生産者を支える必要性とその取り組みがなされることが大切であると考えられるようになり、一人の生産者とグループの消費者が契約を交わすアマップという農産物の産直システムが各地で行われるようになってきました。

 アマップ・AMAP ・Associations pourle Maintien d'une Agriculture Paysanne
家族経営の農業を守る会の略称でアマップと呼ばれています。
これは日本の生活協同組合の『提携』と、アメリカのCSAをモデルに、2001年5月に
南フランスのオーバーニュで発足したといわれています。【研究会と雨宮さんの話より】

 CSAはCommunity Supported Agriculture 地域サポート型農業の意味で、地域住民が地元の農業の維持、発展や新規就農を支援するために住民が会員となって契約を交わし、作付け前に生産者に作物代金を前払いし、収穫時に農産物を受け取る仕組みです。生産者は資金繰りの回収や収入の安定が図れ、台風や害虫災害のときは住民が結果を共有するため、不作のときは農作物の量が減少しても補償を求められることはなく、そのかわり生産者は営農方針や生産状況を消費者に報告し、対話会を開き意見交換し、農法や作物の変更も検討する。消費者は農業体験を重ねて生産者の業務をサポートし交流を図り、有機農業や低農薬を進め、地域の自然環境も維持することも出来るという取り組みでアメリカやカナダを中心に広まってきました。生産者の収入が安定向上することによる経済効果や、地域住民との交流で食を通じ、食育の発展にもなるという地域の活性化に大きな貢献を果たす可能性を秘めています。

 日本の産直という言葉は1990年代にアメリカに渡り、広まってきました。1992年にアメリカのペンシルバニアのトニーさんの農場へ行った時に、トニーさんは毎週土曜日に町のファーマーズマーケットへ野菜を運び、週に一度、会員に野菜や卵を入れたボックスを届けていました。自然農法の福島正信さんや、農薬と健康を指摘した奈良の梁瀬義亮医師、農村医学の創始者若槻俊一先生の影響を受け、有機農業を推進された一楽照雄さんの提携という言葉がアメリカへ渡り、消費者と生産者を結ぶ言葉として定着しました。日本からアメリカへ、アメリカからフランスへ。消費者と生産者を結ぶ言葉と農業のあり方が一人歩きし、今フランスでそのあり方をもう一度問い直され、新しい農業のあり方として広まろうとしていたのでした。小さなおけら牧場と地域の消費者と一緒になって取り組むたまごの会やお肉の会、ミルクの会。地域の人々を結ぶラーバンの森の活動、三国の村おこし、町おこしで始めた『大豆丸ごと豆腐のきっちょんどんやジェラート・カルナ』そして『ラーバンの森を拠点とした農業女性たちとそれを応援し参加してくださる人たちの田舎のヒロインわくわくネットワーク』これらはとりもなおさず産直、提携であり、CSAであり、アマップであり、暗中模索の中から探り出した世界に先駆け通用する取り組みでした。そしてこれらの取り組みはまさに、田舎のヒロインの各地の女性たちに見られるものであり、共通するものだったのです。一緒に同行して下さった梶谷さん自身の、夫満昭さんとハーブを通して地域に築いた類まれなる大きな取り組みは、世界に誇れるまさにCSAであり、アマップだったのです。   感謝


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