田舎のヒロインわくわくネットワーク

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ヒロイン通信 2010年 新春号 表面

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AMAPとCSAと産直と提携

あっという間に1年がたってしまいました。
1昨年(2008年)のことです。11月にフランスのブルターニュ地方、レンヌにあるレンヌ第2大学で、日仏の農業のあり方を問う研究会がありました。
テーマは生産者と消費者の連環を基盤とする『分かち合う農業』について。その半年ほど前に、日本での私たちの地域での取り組みや、田舎のヒロインわくわくネットワークを通しての活動を発表してもらえないかという、レンヌ大学教授の雨宮裕子先生からメールがきました。ただし、1万字の論文を提出して学内審査にパスしたらとのこと、もしかしたら飛行機のチケットも出るかもしれないという条件つき。
『この忙しいときにそんなことできるもんか!』という夫の言葉は右の耳から左の耳へ。なぜ、私たちの取り組みをフランスで発表する必要があるのだろうか。フランスの農業は何が問題になっているのだろうか?
面白そうなのでとりあえず挑戦して書いてみることにしました。
文章のテーマは『おけら牧場から広がる都市農村交流』と『田舎のヒロインわくわくネットワーク』。
フランス初めとするヨーロッパの農業や、現状を学べるせっかくのチャンス。ヒロインの仲間たちに口コミで声をかけると急きょ6人が集まりました。

フランスのレンヌ地方はブルターニュ独自の文化や伝統を持つ地域。できればホームステイをして人々の日常を経験したいと思い、雨宮先生に紹介していただいたのがフランソワさんと迪子さんご夫妻。
レンヌ駅の近く、昔のお城のような一角の建物・3階の2部屋とバス・トイレ・キッチン、そのほかに離れの1室を貸してもらって2週間のレンヌ生活が始まりました。大学へ通い、共同経営の農家レストランや農家民宿を訪ね、フランスで一番大きなマルシェ・リスの広場の市へ行き、迪子夫妻の案内で、市場で牛乳やチーズを販売し、アマップにも参加しているバンサン氏の農場を訪問することができました。
ついでに私の研究テーマのBSEの原因とリービッヒを調べにドイツの農家民宿で宿泊しながら、7日間ドイツを旅しました。「2009夏のヒロイン通信」の参加メンバーの報告のように、かけがえのない貴重な、スリルに満ちた楽しい生活体験でした。

あれから一年、レンヌで発表された種々の研究テーマや、私に要請された地域の人たちと一緒に行っている取り組みや町おこし、『田舎のヒロインわくわくネットワーク』の存在やその意味を考え、大切なことに気がつきました。そのことを伝えたいと思います。

まずは研究会を通して

★ ★食の問題は生命の維持を超えた社会や文化に根ざした問題 ★ ★ 

フランスでも小さな農家がつぶれ、離農し、遊休地や荒廃地が増えています。
狂牛病で食の安全への不安が高まる一方、食物アレルギーがふえ、人は何をどう食べて生きればよいのか、食の問題は生命の維持を超えた社会や文化に根ざした問題であると考えられるようになり、そのために食品流通の公正なルールを検討し、市場原理の本来の役割の意味を問い返す必要があるとみなされるようになりました。
農業は人と人の命の糧を育む大地を調和的に結びつける連環の営みです。生産者と消費者をつなぐ産直は、土から切り離されてしまった都会の消費者に土へ回帰するきっかけをも与えてくれます。産直は生産者が消費者と交流し、農業への理解を深め、小さな農家が生き延びるための一つの方法にもなります。そこで、消費者が小さい農家を支え、地域が再生できるように、消費者と生産者が一緒になって農業のあり方を考え、農業生産物を受け取るだけではなく、生産者を支える必要性とその取り組みがなされることが大切であると考えられるようになりました。
一人の生産者とグループの消費者が契約を交わすアマップという農産物の産直システムが各地で徐々に行われはじめました。家族経営の農業を守る会の略称でアマップと呼ばれています
『アマップ・AMAP ・Associations pourle Maintien d'une Agriculture Paysanne』
これは日本の生活協同組合の『提携』と、アメリカのCSAをモデルに、2001年5月に南フランスのオーバーニュで発足したといわれています。
【以上の文は研究会と雨宮さんの話を参考にさせていただきました】

CSAは『Community Supported Agriculture 』
地域サポート型農業の意味で、住民が地元の農業の維持、発展や新規就農を支援するために地域住民が会員となって契約を交わし、作付け前に生産者に作物代金を前払いし、収穫時に農産物を受け取る仕組みです。
生産者は資金繰りの回収や収入の安定が図れ、台風や害虫災害のときは地域住民が結果を共有するため、不作のときは農作物の量が減少しても補償を求められることはありません。そのかわり生産者は、営農方針や生産状況を消費者に報告し、対話会を開き意見交換し、農法や作物の変更も一緒に検討することが求められます。
消費者は農業体験を重ねて生産者の業務をサポートしたり、交流を図り、有機農業や低農薬を進め、地域の自然環境も農家とともに維持することも出来る、という取り組みで、アメリカやカナダを中心に広まってきました。その結果、生産者の収入が安定向上することによって、地域の経済効果や、地域住民との交流で食を通じて食育の発展にもなる、という地域の活性化に大きな貢献を果たす可能性を秘めています。

サンチョクとテイケイ
日本の産直という言葉は1990年代にアメリカに渡り、広まってきました。
1992年に当時高校生だった娘と、アメリカの農業を知りたくて、東のワシントンDCから西のカリフォルニアまで3週間かけて、リュックを担いで飛行機やバスや電車に乗って横断したことがありました。ペンシルバニアのトニーさんの農場へ行った時に、トニーさんは毎週土曜日に町のファーマーズマーケットへ野菜を運び、週に一度、会員に野菜や卵を入れたボックスを届けていました。会員もトニーさんの農場へ訪れます。放し飼いの鶏の飼い方や、農場を見て、娘がトニーさんは家のお父さんと同じことをやっていると驚いていたのが印象的でした。そのころサンチョクという言葉が日本から入ってきたというのを聞きました。
日本での先駆者である自然農法の福島正信さんや、農薬と健康を指摘した奈良の梁瀬義亮医師、農村医学の創始者若槻俊一先生の影響を受けて、有機農業を推進された一楽照雄さんのテイケイ(提携)という言葉がアメリカへ渡り、消費者と生産者を結ぶ言葉としてサンチョクという言葉とともに定着したということでした。
日本からアメリカへ、アメリカからフランスへ。消費者と生産者を結ぶ言葉と農業のあり方が一人歩きし、今フランスでそのあり方がもう一度問い直され、新しい農業のあり方として広まろうとしていたのでした。

小さなおけら牧場と地域の仲間たちと一緒になって取り組んでいる「たまごの会」や「お肉の会」、「ミルクの会」。そして、地域の人々を結ぶラーバンの森の活動や、三国の村おこし、町おこしで始めた『大豆丸ごと豆腐のきっちょんどん』や『ジェラート・カルナ』そして、ラーバンの森を拠点とした農業女性たちと、それを応援し参加してくださる人たちの『田舎のヒロインわくわくネットワーク』。
これらはとりもなおさず産直、提携であり、アメリカのCSAであり、フランスのアマップでした。放し飼いの鶏の卵を欲しい人たちが集まって、お金を出し合って鶏の雛を飼い、卵を産んだら分け合って買ってくださる。搾りたての牛乳の欲しい人たちが出資して乳牛を飼い、牛の乳を搾り、牛乳を分け合って飲む。毎月、たまごの五の日に集まって、鶏や牛や食べものや農業や環境や教育の勉強会を開き、お互いに助け合い農業や食の背景を学び、理解していく。そのことによって地域の食の環境が守られ維持されていく。

暗中模索の中から探り出した私たちの活動は、フランスの発表者の取り組みにも共通するものであり、世界に先駆けて通用する取り組みだったことに気がつきました。研究会の参加者で訪れた視察先の農場や、農家民宿や共同経営の農家レストランや直売所の取り組みなど、これらの取り組みはまさに、田舎のヒロインの日本各地の女性たちに見られる取り組みであり、私たちの活動や取り組みは勝るとも劣らず世界に共通するものでした。
一緒に同行して下さった広島の梶谷きよみさんが、夫満昭さんとともに、ハーブを通して地域に築いた類まれなる取り組みは、まさに世界に共通し、誇ることができるCSAであり、アマップでした。
田舎のヒロイン一人ひとりが、ネットワークに参加し、お互いに刺激し、学びあい、農業や食に関わりながら、精神的にも経済的にも地域に根ざして自立し、それぞれの活動や取り組みを行う。今なお模索しながらさまざまな試みや取り組みを行う女性たちと、夫を含め、生産者・消費者を問わず、田舎や都会を問わず、それを応援してくださる方々とのゆるやかな自主的なネットワークを組み、誰にもどこにももたれかからず、自らの足で大地に立つ。こういう取り組みは世界でも類まれなものでした。そしてこういう取り組みこそが地域の経済を支え、活性化を与えてくれます。この取り組みが増えることによって小さな経済の動きがたくさん集まって地域を維持し、これからのわたしたちの暮らしを支えてくれるのです。地域の暮らしを支えあうことによって文化が生まれ維持されていきます。私たちが田舎で暮らし、地域を維持し、田舎と都会を結び、これからの時代を切り拓いているのだという確かな手ごたえを感じさせてくれました。農業が豊かになることによって、食が充実し、人々の暮らしが、地域が豊かになり、平和が維持される。戦争反対を声高に叫ばなくても、食べものや農産物を生産し、それぞれの地域の環境を守り、維持し農林業を大切にしていくことによって私たちは平和を維持しているのです。適正規模を逸脱した農業は環境破壊を起こしますが、自分たちの身の丈にあった農業や農的な暮らしは平和運動につながるということを私はレンヌで発見したのです。


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